ジョージ事故に遭い命の儚さを知る

昨日から緊張しながら、新しい歯医者の治療を待っていた。

 

本当は24日の朝に予約を入れてたのだが、その日は夜からの降り出した雪により朝から30センチの豪雪。

 

これではとても車が出せないということで、歯医者に連絡して29日に治療を変更したら、初めての歯医者の帰りに軽トラックとの正面衝突の事故に合った。


なんてツイてないんだ…


事故現場のちょっと手前の交差点で前の車が青信号でも進まなかった。俺はクラクションを鳴らして揉めるのも嫌だから、二車線だったので右の車線に移動して先に進んだ。

思えば、ここで前の車が走り出すのを待ってたら事故には遭わなかっただろう。

しかし、そこから50メートルは進み、法定速度は間違いなく守ってた。

すると、前から走って来てる軽トラックがなんだがこちらに向かって来た。


まさか!?


そう思う間もなく、俺の運転席に突っ込んで来たのだ。エアバッグが膨らみフロントガラスにヒビが入った。俺の車は道路の端のブロックに止まり、前輪は凄い音を出してキュルキュルと煙を上げて回ってた。

俺は何も怪我がないと思ってたから、とにかくスマホで警察に電話をと思ってスマホを探した。

すると、膝の上に血がポタポタと落ちて来た。


俺は、

 

「ワイ、死んでしまうかも…」

 

一瞬で血の気が引いた。それは血が出てるからかも知れない。

そう考えていると、フロント部分から煙が立ち上がる。運転席はグチャグチャになってるので、運転席のドアは開きそうもない。

その間にも煙が立ち上がる。俺は「これは車が炎に包まれるかも?」そう考えて、一刻も早く車から出なくてはと考えて、助手席から命からがら飛び出した。

まるで、アクション映画の主人公の気分だ。額からは血を垂れ流し、炎上するかも知れない車から必死に飛び降りる男。

映画なら仲間か恋人かのどちらかが駆け寄って来るシュチュエーションだ。


しかし、誰も来ない…


道路の方を見ると、俺の車にぶつかって来た軽トラックが道路の真ん中で停車してたから、それを通行人を含めて、みんなで移動させてる最中だった。

 

俺はこんなに血を流してるのに、誰も駆け寄って来ない。

 

しょうがないから、車中からスマホを捜し出し自分で警察に電話をした。

体は痛くはないが、頭から血が出てるのは間違いないから、どんなケガかも分からないから救急車も自分で手配した。

 

これで軽症だったら大恥だ…


そう思って病院に連絡してたら、どこかの男性がやって来て俺のケガの状況を調べ始めた。そして、俺と病院への電話を交代して病院に詳細な連絡をしてくれたのである。


なんて頼もしいんだ…


そして、次に現れたのは看護師と名乗る女性。この人は救急箱を持って来てくれて、俺の額のキズを治療し始めた。


なんて優しいんだ…


俺はみんなに心配され治療をされてる時に不謹慎かも知れないが、心配されて嬉しいという感情が巻き起こった。

それと同時に、この世はなんと温かいのだとも思った。

死ぬ時はみんな1人だと思ってはいるが、やはり日本という国は温かい。

自分で救急車を呼んではみたが、体はどこも痛くない。これは軽症なのでは?そう心の中のリトルジョージが呟くが、額から血が出てるのは間違いない。

これは重症かも知れないのだと思って、横になりながらそっと目を閉じた。そこへ救急車隊員登場。

額から血を流して横たわってた、俺に必死の呼びかけをする。


「大丈夫ですか?名前は分かりますか?」


俺は消え入りそうな声で呟く。


「ジョージ…ビタミンジョージです…」


その声は決して元気がなくなったからの、か細い声ではない、思いの外、大事になってしまったから申し訳なさからの声の弱さなのだ。

しかし、血が大量に出てるわけだから、自分で判断してはいけない。とにかく素直に救急車に乗った。

その直前に、こちらも消え入りそうな声で、


「本当にすいません…」


と、謝ってきた老人がいた。この人が軽トラックの運転手か…

そう思ったが、俺はそのまま救急車に乗って運ばれた。

病院に着いたらCTスキャンで検査され、血液検査などいろいろな検査をされたが、額の切り傷以外の異常はなしだった。

そして、治療が終わった待合室で突然死した人の親戚の人に警察の人が事情聴取してる場面に出くわした。

警察が親戚の人に「最近はいつ頃会いましたか?」との質問をしたら「13〜14年前ぐらいですかね」との答え。


なんだか切ない。


親戚の人もどうしていいか分からないような感じだった。故人のスマホが鳴ってるのを医者がどうしたらいいか?と親戚の人に聞いて、親戚の人が電話に出ると、


「〇〇さん?」


「いや、違う。〇〇は亡くなったんよ、さっき…」


テレビドラマで見るような場面だ。

 

本当に命は儚い。

俺は自分で救急車を呼び、大騒ぎをしてしまったが、目立った外傷は何もなし。本当に恥ずかしい…

そして、先ほど家に帰って来たら、警察から電話があり、近くの交番の防犯カメラに相手の車が、こちらの車線を超えて俺の車にぶつかってる映像があり、もう何も争うことがなく、向こうが自分の過失を認めて謝ってるから、後でお詫びの電話をかけるとの連絡だった。

そして、電話がかかって来た。相手は74歳のご老人だった。

 

そして、その老人は電話の向こうで泣いていたのだ。俺はこれだけで、もう許してしまいそうになる。


「気にしなくていいですよ、お互い命があって良かったですね」


そう伝えたら、さらに泣いていた。

後は保険屋の出番なので、俺は何も文句を言うことはない。

相手が軽トラックではなく、もうちょっと大きな車だったら、俺は生きてなかったかもしれない。本当に車に当たるまでの瞬間がスローモーションのように見えた。

死ぬってこういうことなんだろうな。額をケガしてるのに、まったく痛くないのだ。ただただ、まるで夢の中のような感じだった。

しかし、いくら俺が悪くなくても、相手の老人に何かあったら、俺はとても平静ではいれないだろう。

 

アメリカ国家安全保証会議のデータによると、飛行機事故で死亡する確率は20万5552分の1で、自動車事故の2020年のデータでは、年間309178件の交通事故が発生していて、500人に1人が事故の被害者となり、250人に1人が加害者となってる。


交通事故はいつやってくるか分からないのを痛感した。


命もあっという間に無くなる可能性がある。


やりたいこと、伝えたいことを後回しにしないで、出来る時に行動することをオススメします。

 

 

毎日普通に起きて、寝るまで過ごせるだけで、これがもう奇跡だと思える1日だった。