今を受け入れて生きて行く


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昔、最初に就職した時の上司と少しだけ口論になったことがあった。

 

あの時の俺は、どんな人生でも努力さえすれば夢は叶うと信じてたのかも知れない。それとも努力が出来てない自分のダメな人生への言い訳を探してたのかも知れない。その時の口論になった原因とは、

 

「今から死ぬほど努力したらプロ野球選手になれる」

 

まだまだ若かった俺は、もちろん努力したらプロ野球選手になれると主張した。上司の人は、それは絶対無理だと主張した。しかし、俺は、

 

「やってみないと分からないじゃないですか!普通の努力でプロ野球選手になれる人の何倍も今から毎日練習したらいい!やってみないと分からない!」

 

俺は本気で思ってた。まだ20代だったし、プロ野球選手の人で体格に恵まれてない人でもプロになれてるわけだし、30代で1軍に定着する人だっている。

 

プロの選手が1日100回腕立て伏せをするなら、俺は1000回すればいい。

 

プロの選手が1日2時間練習するなら、俺は10時間練習すればいい。

 

簡単なことだ。人より何倍も何十倍も努力をすれば、必ず結果は出るはずだ。その時の俺は本気でそう思ってた。

 

では、今の俺の考えはどうだ?

 

今の考えは、その当時の上司の考えと同じになった。長く人生を歩んでると、努力だけではどうしようもない現実を嫌でも知ることになる。

 

腕立て伏せを1000回やったとて、1000回分の筋肉疲労と1000回分の時間が過ぎるだけだ。

 

「何をやっても無駄だ」という考えになったのではなく「努力ではどうにもならない事もある」という考えになったのが正解だ。

 

その時の上司の考えは今なら分かる。体力的な問題は、努力では絶対に埋まらない絶対的な差がある事を言いたかったのだ。

 

もちろん、その時もそんな事は上司からちゃんと説明されてたが、その時の火の玉ボーイのような燃えたぎる心を持ってた俺は、

 

「いや!体力的な問題も努力でなんとかなる!今から毎日の積み重ねで、俺だってプロ野球選手になれる可能性はありますよ!」

 

学生時代からサッカーしかして来なかったのに、なんでこんな考えになったのか?今思うと本当に恥ずかしい…

 

勉強とか知識の部分ならば、今からの努力で、ある程度まではなんとかなるかも知れない。しかし、プロの世界は甘くない。どんなに若くてピチピチなトビウオみたいな肉体を持ってたとしても、努力ではどうしようもない世界もあるのだ。

 

しかし、過酷な人間関係から逃げ出した俺の心は、まだ幼い少年のような心を今だに持ってる。その心が、今まさに、こう叫ぶ!

 

「ジョーーージ!!それだ!その既成概念に縛られた考えを捨てろ!!お前は本気でプロ野球選手になろうと努力したことないやん!チキンラーメンに例えるなら、まだお湯も入れてない状態や!!まだ乾燥麺の状態やろ?熱々のお湯を入れる努力をしてないやん?」

 

努力だけではどうにもならない世界があると分かってる今でも、俺の中のリトルジョージが今でもこう叫ぶのだ。

 

しかし、リトルジョージよ、違うのだ。チキンラーメンにお湯を入れることは今の日本なら、ほとんどの人が出来る。そうじゃなくて、無人島に取り残されたとしても、お前はチキンラーメンにお湯を入れれるのか?ということだ。

 

どう考えても鍋も火もない無人島では無理だろ?しかし腹は減る。だから、お湯が無くても、ベビースターラーメンのように乾燥麺状態でも食べれる道を探せ!という事だ。

 

これが努力してもダメな事があるという事だ(例えが盛大に間違ってるかも知れないが)

 

いいか、リトルジョージよ!大人は嫌がらせで言ってるわけじゃないんだ。自分が歩んだ人生の中で自らやってみて、失敗した経験があるから、少しでも若い時間を無駄にしないように、効率良く幸せな人生を目指せるようにと、アドバイスしてくれてるだけだ。

 

しかし、今の年齢、今の現状、全てを受け入れ分かった上でも「まだ俺は何も努力してないから…」そんな言い訳が浮かんでは消える。

 

それは、努力を諦めた人生には価値がないと思ってるのかも知れない。精一杯努力した上で行き着いた人生じゃなかったから、

 

「本気で努力して挑戦したことがないから、もし本気で頑張ったら違う人生があったはず」

 

そう思いたいだけかも知れない。

 

でも、全ての諦めや環境を受け入れて進んでる人生にも価値はあるはずだ。もしかしたら、それこそが本当の意味ある人生かも知れない。

 

俺がこんな事を考えながら、昼食を食べてると家の外からは、音が聞こえてくる…

 

小雨の中、父親が麻痺した体を使って農作業をしてる音だ。もう昼食の時間になってるのに…もう何もしなくても暮らして行けるのに…

 

毎日、家の中でずっとNetflixでも見てたらいいのに…

 

それでも父親は今日も外で働いてる。

 

障害者となった今は働かなくてもいいし、誰にも命令されてもないし、右手も麻痺して動かないのにだ。

 

俺の父親は祖父が障害者だったから、都会に出る夢を諦めて、この家を守り、今もずっと自分に出来る努力を続けてる。

 

「全てを受け入れて、今ある人生を生き抜く」

 

こんな人生にも絶対に意味があるはずだ。

 

俺も、父親の人生の価値に気付けるような人間になったよ。

 

「父ちゃん、ありがとう」

 

 

自分の歩んで来た人生が恥ずかしくて、今の俺は隠れてお礼しか言えない…