街へ

山奥から街に来た。

 

今住んでる所は夜の6時になると人はおろか、車も通らなくなる場所。

というか、国道から少し入る俺の家まで3キロぐらいの間に30人も住んでないわ、多分…

何ヶ月か前には突然鹿が現れて、車で引いてしまった時があった。

前方を気にしてたら防げたというレベルではなくて、他人の納屋の影から車と2メートルの距離もなく突然現れたから、とても避けれる状態ではなかった。

道の端に鹿が倒れてたから、死んだと思って怖くなり、とりあえず家まで帰って両親に報告したら、車を傷つけやがってと怒られたんだけど、それより鹿肉を取りに行こうと言われ再度父親と鹿を見に行った。

そしたら、事故現場の道の真ん中に鹿が立っててこちらを「お前が引いたんかー!」と俺を睨んでた(あくまで恐怖心でそう見えた)

その鹿を見た瞬間に父親が車で鹿に突進したんだよ、さっき車に傷つけてたと怒ってたくせに。

しかし、鹿はピンピンしててそのまま走って逃げたんだけど、とにかくそんな秘境に住んでる。

街では人と目を合わせることなく移動するけど、この地域では車で運転してても、ほとんどの通行人が運転席を見て頭を下げて挨拶してくる。

俺は気まずくて街なかと同じように通行人と目を合わさず運転してる。
 
こんな無愛想な挨拶も出来ない人間が、少しでも人の為になりたいだなんて身の程知らずや。  

でも、松ちゃんがチキンライスという歌の歌詞で書いてた。

親孝行って何って考える、でもそれを考えることがもう親孝行なのかも知れないと…

なので、少しでも人の為になりたいと考える事が大事なのだと自分を慰める、冬の夜。

 

こうやって人生の残り時間は過ぎて行くのだ…