強者に抱かれる


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夜は、たまに外に出て夜空を見上げる。

 

人生をやり直すなら、いつからやり直そうかな…

 

でも、いくら考えても過去には戻れない。

 

そんなことを考えてたら、今宵は星がやけにキラキラしてるなと思ったら、俺の目にだけ雨が降って来てた。

 

もし、もしもだ、バレンタインデーの記事で書いた、ヌキ子ちゃんの巨大な愛を俺が全身で受け止めてたとしたら、俺の人生はどうなってただろう?

もちろん、ヌキ子ちゃんの見た目はおかっぱ頭のお地蔵さんのような見た目なわけだから俺が見慣れるまでは大変だろう。自分の美的感覚を1から構築せねば、決して夜の愛の営みを全うすることは出来ないと思う。

しかし、この難攻不落の恋のマゼラン海峡を突破したならば、その先に待ってるのは、平穏穏やかな安心信頼の海なのではないだろうか。

 

考えてみてほしい。

 

女子である自分の見た目が岸田劉生画伯の有名な「麗子微笑」にソックリな姿なのだ。


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「これが私、この姿で生きていくしかない!この姿こそが私なんだ!」

 

自分の全てを認めて、さらに自分が自分の1番の味方となり、ありのままで生きていく!と覚悟を決めたヌキ子。

そんなヌキ子の目の前に、恋愛アルプス山脈で呑気にエサを食べてた俺というユキウサギのような食べごろの獲物。

 

そりゃ、パクっと食べたくなるのは必然だったと思う。

しかし、俺は小生意気にも面食いだった。その後の寂しい人生を考えると、あの時にヌキ子ちゃんにパクっと食べられてた方が幸せだったのかも知れない。

俺の股間うまい棒サラミ味はヌキ子ちゃんの大きな大きなクロアワビにパクっと食べられた方が成仏出来てたのかも知れない。

 

TikTokを見てると、たまに野生動物が捕食されてる残虐なシーンが流れてくるが、最初、食べられるのに必死に抵抗してたシマウマが途中から、恍惚な表情を浮かべてるように見える時がある。

 

強者に身を任せると、ある意味、気持ち良くなるのだろうか?

 

俺もヌキ子という強者に思いきって抱かれてたら、その後の人生は一生孤独とは無縁な人生だったのかも知れない。

 

ヌキ子ちゃんの愛を受け止めなかった俺はその後の中学1年生でサッカー部に入ったことによるモテ期が到来。ここでの立ち回りは、もっと落ち着いて周りの男子にも気を使っていたらと、今ならば思う。

 

しかし、当時はすぐに顔が真っ赤になるほどの、ウブな紅海から出発したばかりの思春期航海だった俺。

 

その後にさらに欲望に身悶えながら性のスエズ運河を航行してた俺の目の前に広がった、軟式テニス部女子たちのコートに広がる甘美な地中海に出会った時の衝撃たるや!

 

ジョージの中の燻製ジョージが狂わないわけはない!!

 

今まで煙でしか炙ってもらってなかったのに、いきなりガスバーナーで直撃である。

 

そりゃ、アチチと飛び跳ねて、恋の呼吸で踊りだすに決まってるじゃないか!

 

俺がボールを蹴る度に「キャー!」

 

俺がドリブルする度に「どこ行くのぉ〜!」

 

などと、ピンクの声援の嵐なのである(ジョージの妄想耳ではそう聞こえた)

 

サッカーのドリブルと言えば、敵のいない所を走り抜け、そして相手のゴールに近づくのが鉄則。

 

しかし、俺のドリブルはサッカーグランドの左後方にあるテニスコートに向かって自然と走って行くのだ。

そして、ゴールの方を先に見ずにテニスコートの中の女子の視線の行方を先に確認してからボールを蹴り込むのが日常茶飯事。

 

しかし、こんな調子に乗ってたら、同性からの反感は必至である。

 

そして、予想通りに空手をやってる同級生に右に左にと人間サンドバッグのごとくボコボコにされ、見事に天狗の鼻をへし折られたのだ。

 

俺の鼻から飛び出る真っ赤な鮮血。そして、俺のその惨めな姿を見てる、テニス部女子…

 

俺の人生最大のモテ期はこうして終わった。

 

俺を好きだと言ってた女子たちは、真っ赤に熱したフライパンに水滴を落としたように一瞬で蒸発して消え去った。

 

跡形もなくだ。

 

人を好きだという気持ちは、人間の感情の中で、こんなに1番先に無くなるものなのか…

 

こうやって書いてみると、この失敗は決して事前には防げなかった気がする。失敗した今だからこそ反省点が分かるのだ。その当時の調子に乗ってる俺では絶対に気づくことは出来なかった反省点だろう。

 

だから、この心のまま、あの頃に戻りたい。

 

夜、夜風に当たりながら星を見てると、つい、星にこんな願いをしたくなる。

 

でも。どんなに星に願っても、あの頃には戻れない。

 

俺みたいな、ちっぽけな存在の流木は結局は大きな流れに身を任せるしかないのだ。

 

そう言いながら、明日の夜もまた星空を見上げるのだろう。

 

 

そしてまた、無駄な願いを星空に願う夜を繰り返すのだ。