止まったままの時間


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実は高校を卒業してから、同級生とは誰一人として出会ったことはない。

 

俺が両親とも音信不通で故郷にまったく戻ってなかったのもあるが、ド田舎なのでみんな都会に出てるからだとも思う。

母親から聞いた話だと、病気で若くして亡くなった同級生もいるようだ。しかし、顔は覚えてるが名前は憶えてなかったり、名前を聞いたら名前は思い出すが、顔はまったく覚えてなかったりで、顔と名前が一致する同級生は数人しかいない。

 

さらに、顔を思い出したとしても、みんな子供の

時のままの顔なのだ。

 

当たり前だ、高校を卒業してから同級生とは誰とも会ってないわけだから。

 

俺の故郷の時間は高校卒業の時から止まったままだ。

 

今は漫画はまったく読まなくなったが、高校生の時は週刊少年ジャンプを毎週読んでいた。そのジャンプを読み終わったら毎週くれる友達がいたが、その子の家族が地元からいなくなったと母親から聞いた。

家は商売をしていたが、店自体が少ない町だから繁盛はしていたと思っていたが、理由を聞くと借金を抱えてしまい、店も新築で建てた家も全部売り払い長年住んだ故郷を捨ててどこかに行ったようだ。

 

こんな話を聞くと本当に寂しい。

 

その子の笑顔も高校生の時のままの姿で思い浮かぶ。

 

俺は高校の卒業アルバムを貰ったその日にゴミのように捨てた。

 

卒業式の後にクラスのみんなでお別れ会をするような事を聞いてたが、俺は無視して自転車でぶっ飛ばして家に帰った。

 

「やっとこのクラスから解放される!やっと知らない場所に行ける!」

 

そんな思いを持ちながら、自転車で雨の中、帰ったのを思い出す。

 

前に書いた3年間片思いをしてた、みさきちゃんやその周りの友達から、俺は普段から小馬鹿にされてたから、早くこの高校での思い出を消し去ってしまいたかったからだ。

 

あの子が変わっていく - ビタミンジョージの生き方

 

田舎だから、生徒の人数が少なくて3年間ずっと同じ生徒と過ごしてたから本当に辛かった…

 

俺は、みさきちゃんから酷い扱いを受けてたわけだから、みさきちゃんを嫌いになれれば楽になれて良かったのだが、馬鹿な事に俺はずっと3年間みさきちゃんを好きで思ってた。

 

さきちゃんを目の前にするとカチンコチンのド緊張をしてしまい、みさきちゃんを好きなのが周りにバレバレで、それでずっと周りから、からかわれてしまってたのだ。

 

さきちゃんと仲の良かった女の子が、小学校の時はたまに俺と途中まで一緒に帰ってた女の子だったんだが、この子が高校では豹変してしまい、みさきちゃんと一緒に俺を馬鹿にしていた。

 

ジョージ、これも本当に辛かった…

 

これはからかわれていただけだ。イジメではないはずだ。イジメまでは行ってない。関西で言うところのイジりなのでは?

 

そう思いたいが…

 

例えば、朝に教室に着いたら、俺の椅子が無かったり、俺の机が一番後ろに移動させられてたり、俺の上履きが雨の中、外に捨ててあったり…

 

あれ?

 

今、思い出すと完全にイジメられてたのかも?

 

しかし、それの首謀者がみさきちゃんなのだ。

 

だから、俺は抗議も何も出来なかった。

 

それでも、3年間ずっと、みさきちゃんを好きだった馬鹿なジョージ…

 

そのみさきちゃんが、たまに俺の机の椅子に座ってて、そして机の中身を整理整頓してくれる時があったのだ。

 

まさにアメとムチ…

 

しかし、そのアメが本当にアメの形をしてなくて、ちっちゃいちっちゃい砂糖の粒みたいな優しさなのだ。

 

でも、それでも、その砂糖の粒が俺の暗黒の高校生活の中で小さな光となって、俺を照らしてくれてたのだ。

 

その暗黒を作り出してる張本人の気まぐれの優しさなのにだ…

 

切ない、俺はなんと馬鹿でお人好しなんだ…

 

さきちゃんは、たつや君という彼氏がいて毎朝のようにたつや君の膝の上に乗ってイチャイチャしていた。たつや君はみさきちゃんの腰とか足とか触りまくってた。

 

そして、それは俺の机の椅子の上でも行われてる時もあった。

 

朝、教室に着いた時、そんなイチャついてる2人の姿を見た俺は自分の席に行くことも出来ず、授業の始まる直前の時間までトイレで時間を潰した時もあった。

 

2人のイチャイチャが終わるまでだ。

 

3年間、ずっと片思いしてた女の子と彼氏とのイチャイチャが俺の机の椅子の上で行われている。

 

どこかのAVのシチュエーションみたいだ、安っぽい設定だ。

 

いや、映画「ストロベリーナイト」でもあったな。主人公の女刑事が捜査してるヤクザと車の中でイチャコラしてるのを女刑事に好意を寄せてる同僚刑事が終わるまで外で待ってたっけ…

 

この映画を見た時に胸が痛かったのは、自分の経験と照らし合わせていたのかも知れない。

 

まぁ俺の方の役割がショボ過ぎて比較にはならんが…

 

しかし、このたつや君も小学校時代は途中まで一緒に帰ってた仲良しだったのだ。その人間がみさきちゃんとグルになって、俺に嫌がらせをしていた。

 

こんな胸をエグる思い出を思い出したくはなかったが、これで俺が卒業アルバムを捨てたくなった気持ちが少しは伝わったと思う。

 

故郷を捨てたくなった気持ちも。

 

多分、ここに書いた人間たちは何も思ってないだろうな。覚えてもないだろうし、そんなつもりはなかったと言うかもだ。

 

しかし、俺の高校生時代の記憶の時間はここで止まってる。

 

心は今も大人になってないんだ。

 

しかし、なんで俺はいつもこんなにツイてないんだ?

 

決して女性に相手されてないわけではないと思う。それなりに仲良くなって、付き合うなどの時間は過ごすことは出来るんだ。

 

しかし、中学の時は好きだと言ってくれてた女子たちに机に悪口書かれたり、高校では片思いしてる子や小学校で一緒に帰ってた仲良かった子にイジメられたり、大人になってからも借金背負って助けた女性からモラハラ受けた末に全財産失ったり、なんでこんな思いばかりを繰り返すんだろう…

 

女運が悪いのか?

 

いや、人に理由を押し付けてはダメだ。結局は俺に原因があるはずだ。

 

それに思い出ばかりを抱えて生きていたらダメだ。

 

止まったままの時間を動かせるのは自分だけなのだから。

 

だから、歩くしかない。

 

 

辛い思い出は楽しい思い出で上書きして生きて行くしかない、今ならそう思える。