一番下から見る景色


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言葉は適切ではないかも知れないが、一番下の景色とは差別される側の景色だと思って書き始めている。

俺は差別されてる人の姿はたくさん見てきた。

「にしおかすみこ」という芸人さんがいる。

この人は2008年頃にエンタの神様でブレークをしたんだが、俺はあるイベントでこの人を見たことがある。

一通り、テレビで見るような持ちネタをした後にお客さんと写真撮影や握手をしてたが、この人にとっての全盛期であろう時期に本当に腰が低くて、一生懸命にサービスをしてるのを見て、俺は好感を抱いたのだった。

言葉は悪いが、汚い身なりの客であろうと、全員に同じような態度で接していた。

しかしだ。

別のイベントで、もう今は見ることが無くなった、ある綺麗な好感度の高い女性タレントさんがイベントか終わるやいなや笑顔は消え、オッサンの呼びかけは無視し、スーツ姿のお偉いさんには笑顔で挨拶してる姿を見て俺は大変ガッカリした思い出がある。


なんや、テレビとまったく違うやないかーい。


いちいち、全てのお客さんと同じ対応してたらきりが無いのは分かるが、あまりにも対応が違うから、ある意味プロやなとも思った。

せっかくテレビで見てた綺麗な有名人に会えると思ってイベントに来てるのに、無視された人はどんな気持ちになるんだろう。

熱心なファンだっだら、一気に嫌いになるだろうな…

仕事関係の社長とかに話しかけられたら、絶対に無視はしないが、一般人のオッサンの声援は無視。

自分の利益に繋がらないからだろうけど、誰だって絶対に差別する側から転落しないという保証はない。いつ、どんな時も一番下まで転がり落ちる可能性はある。


俺は中学に入学した時は最初は卓球部に入った。本当は小学校からサッカーに夢中だったから、サッカー部に入りたかったのだが、中学生になる前に他の小学校とのレベルの差を思い知らされて、ビビってサッカー部に入るのは止めたのだ。

俺の通ってた小学校にはサッカーチームは無くて、ただ、昼休みと夕方に同級生たちと遊びの延長でやってたサッカーしかしてなかった。しかし、中学校になると多くの町から子供たちが集まって来る。その中の一番人数が多い町の小学校にはサッカークラブというコーチ付きのチームがあって、お金を払ってサッカーしてる子供たちがいたのだ。

この子供たちが本当にサッカーが上手かった。リフティングなどは平気で100回ぐらいはするし、ドリブルやフェイントも上手い。初めてそのチームの子供たちと対戦する機会があり、俺のサッカーに対する自信は完全にぶち壊された。

俺はリフティングは50回も出来なかったし、ドリブルは千酔っぱらいのように千鳥足、フェイントはボールを操るではなく、自分の体だけをフニャフニャ動かすだけの、タコさんフェイントで本当にレベルの差を痛感した。

俺のサッカー愛は中学生になる前に打ち砕かれて、スポーツはサッカーだけが好きだったのに、なぜか卓球部に入部した。

しかし、卓球に青春をかけてる人には申し訳ないが、卓球部に入った俺はまったく女子の眼中に入ることはなく、モクモクと素振りだけを続けてたのだ。

得点が決まった時の掛け声は「サー!」がいいかな?いや「チョレイ!」がいいかな?卓球が上手くなる前に自分の掛け声を練習してると、なんと見てしまった。


サッカー部の練習を熱い眼差しで見てる、軟式テニス部の女子の集団を!


これはもしかして?サッカー部に入れば、自然とテニス女子の視線の先に入ることが出来るのでは?

こんな、下心丸出しの動機で卓球部を辞めてサッカー部に入ったら…

なんと、このジョージ、思惑通りにキャーキャー言われ出したのだ。

しかし、卓球部の時のジョージとサッカー部のジョージは見た目も中身も何も変わってない。


変わったのは、卓球部かサッカー部かの違いだけだ。


人間の質が上がったわけでもないのに、肩書が違うだけでチヤホヤされるのだ。

下心だけでお世話になった卓球部を早々と捨て、アッサリとサッカー部に鞍替えしてるわけだから、何なら人間の質は確実に下がってる。

しかし、そんな人間性の人間が女子からは良い扱いを受けてる。

ということは、世間は本質など見ずに人の扱いを変える可能性があるということだ。

今はこうやって冷静に分析して書けてるが、当時の俺は肩書きで扱いが変わっただけなのに、自分の実力、魅力で女子を惹きつけてると勘違いしてしまい、天狗の鼻は伸び切ってしまってた。

なんという浅はかな人間性だ。

しかし、すぐに天罰が下り俺は同級生の男子にボコボコに殴られ、そしてビビってサッカー部を辞め、見事に底辺まで転がり落ちた。

俺も一番下の景色を見た人間だと思ってる。

本当のドン底を見てる人からしたら、俺の一番下の景色など甘いと言われるのは十分承知だ。しかし、他人の痛みなど一生分からないのだ。自分の痛みしか実感出来ないし、理解出来ない。

その時に机の角に足の小指をぶつけたならば、それがその人の現段階での最高の痛みだ。だから、その人が一番下の景色と思ったら、一番下の景色なんだ。

俺が一番下だと思った所から見る景色は本当に惨めで情けなかったけど、でも思ってた。女子にモテて調子に乗ってた俺は人に殴られても仕方ない男だと。

周りの男子に思いやりもなかったし、自分がモテることばかりに目が向いてて、本当にクソな人間性だった。


今思うと、女子ににチヤホヤされて、周りの男子を大事にしてなかった俺から見る景色こそが、一番下の最底辺の景色だったのだ。


俺はモテてチヤホヤされてても、決して人間的には上には上がってなかった。


心は最底辺で薄汚れていたのだ。


人は本当にいつ差別される側になるか分からない。だから、なおさら周りの人に気を使うべきだった。

にしおかすみこさんは絶頂期にあんなに腰が低かったのは、下積みが長かったか、過去に辛い思いがあったのかなと思う。


結論を書いてしまうと、人を差別してる時点で一番下の最底辺の人間に成り下がってる。


それを気づいてないから、いつか自分で分かるまで一番下の景色から人をさらに差別し続けるんだろう。

俺は少しでも人間性を磨ける経験が出来て本当に良かったと思う。

 

 

今は、俺を殴って頭を冷やしてくれた同級生に本当に感謝してる。