裏切りの代償


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俺は誰かを裏切った事はあるかな?

 

 

そう考えて真っ先に浮かんだ相手は両親だ。

 

まさか、俺が全てを失いボロボロとなって実家に戻って来る未来なんて予想してなかっただろうし、そんな人間に育てたつもりもなかっただろう。

小さな時の記憶を思い出してみると、こんな山奥の田舎から毎週のように1時間かけて街に繰り出し、焼肉屋に連れて行ってもらってた記憶がある。

 

父親に言わせれば俺と兄は、

 

「お前らはまるで、どこかの国のお坊ちゃまのように大事に育てたんや」

 

ということらしい。焼肉は確かにごちそうだが、どこかの国のお坊ちゃまは焼肉目当てに毎週1時間かけて通わないとは思うが、とにかく大事に育ててはくれたらしい。

 

そんな大事に育てられた俺は見事に期待を裏切った。

 

中学で卓球部に入ったら、まったく女子に相手にされなかったから、即辞めてサッカー部に入ると、そこはキラキラした青春ドラマの王道ラインであり、テニス部の女子にモテまくりの俺は調子に乗りまくりの、他の男子に反感買いまくりの、鉄拳制裁ボコられまくりで、あっという間の転落人生と相成った。

 

そして、俺はサッカー部をあっさりと辞めたのだ。

 

それを父親は本当に残念がった。夕食どきに毎日のようにそれについて愚痴愚痴と怒られたジョージだったのだ。

 

「チキショー、なんでや、僕にだって事情があるんだ。白鳥に生まれたが実は心がビンチョウマグロだったかも知れないじゃないか!白鳥として空を飛んで足だけ水に浸した人生なんか嫌だ!ビンチョウマグロみたいに身体全体で水を感じたい!そんな間違いを修正して何が悪いのか?」

 

そんな思いを持ってみたが、本当はサッカー部に怖い先輩と同級生がいたから、また殴られるかもと思って、ビビって辞めたのが本当の理由だった。

 

両親を裏切り続けた俺は思った。

 

んっ?

 

俺は一回でも「サッカー部で才能を開花させ、世界に羽ばたくサッカー選手になってみせる!」

 

こんな宣言をしただろうか。否、してない。俺はただ思春期のマグマのような欲望に突き動かされて、サッカー部で少しでもモテてやろうと思った愚民でしかなかったのだ。

 

それなのに、勝手に父親に期待されて、裏切られたと思われて、毎日のように怒られてたのは納得がいかない。

 

 

そうなのだ、人が裏切られたという感情は、自分が勝手に相手に期待した末の感情の可能性が高い。

 

 

もちろん、女性が信じてた男性の浮気で傷付いた場合は裏切られたと言っていいだろう。

 

その男性が「俺は付き合った時でも浮気はするから!それでもいいなら付き合って下さい!」

 

そう宣言しての交際ならば、浮気は裏切りではない。

 

しかし、この宣言を言ってから交際を申し込む男なんてほとんどいないだろうから、浮気の場合はほとんどが裏切りだろう。それは男女ともだ。

 

こんな屁理屈を語ったが、俺は両親を裏切ったという感情は正直ある。しかし、人に裏切られたという感情はあまりない。

 

俺が勝手に相手に期待して、そして一人でショックを受けてる場合がほとんどだからだ。

 

相手が自分の思い通りに動くわけがない。なので、自分で勝手に理想の相手を作り上げ、そして妄想の中でショックを受け身悶えて息絶えるのだ。

 

「信じて尽くしたのに、酷い…」

 

相手からしたら、知ったこっちゃないである。

 

よく事件を起こしたストーカーが「交際してたのに冷たくされた」とか証言してるのをニュースとかで見るが、それは果たして交際してたのか?

交際以前に交際を断ってた最中での事件が多いような気がする。ストーカーにしたら、もう交際してるわけだ、妄想の中で。

 

だから、冷たく断られたら裏切りと感じてしまう。

 

こうなると、女性は気軽に人に冷たく出来ない。何されるか分からないからだ。

 

でも、少しでも優しくするとストーカーにしたら交際続行中となってしまう可能性もある。

 

なんだこの、妄想恋愛永久機関は?

 

永久機関とは外部からエネルギーを受けることなく、永久に仕事をし続ける装置のことであるが、19世紀に確立した熱力学の基本原理に反してるために実現不可能の装置である。

 

しかし、ストーカーにとっては自分で作り出した恋愛に、ストーカーが怖くて冷たく出来ないという状況からの気を使った相手の優しい言動を、勝手に自分に好意を持ってるとパワー変換して、それをパワーに交際続行中という運動にしてるわけだ。

 

まぁ、永久機関の運動と人の妄想での運動を一緒に考えてはいけないが。

 

このように、勝手に妄想して勝手に期待してからの自業自得な裏切りもあると思うが、本当に相手からの言葉を信じて裏切られた人もたくさんいるだろう。

 

「絶対に返すから、お金を貸してほしい!」

 

「君だけを愛してる。僕と付き合ってほしい!絶対に浮気はしないから!」

 

このような言葉を言われて、相手を信じて、お金は返されず逃げられたり、知らぬ間に二股されてたり、実は相手が結婚してたり、こんな話は世の中にたくさんある。

 

どうして、こんな裏切りが出来るのか?

 

自分を信じた人を裏切って、何も罰がないと思ってるのだろう。だから、自分を信じた人を裏切るのだ。

 

しかし罰はあるよ。必ず裏切りの代償はある。

 

 

自分を信じた人を裏切るという事は、自分が信じたいと思った相手から自分も裏切られる可能性があるという事だ。

 

悪い事をしたらお天道様が見てると昔から言われてるが、それはお天道様が見てるのではない。

 

それは人を裏切った事のある自分自身が見てるのだ。

 

人に裏切られた人は人を信じた事を後悔しなくていい。

 

人を裏切らないあなたは、また人を心から信じられる。

 

だって、あなたは人を裏切らないから、次の人こそ裏切らない人だと、人を信じられる希望を無くさずに生きられる。

 

 

裏切りの代償とは、相手のことを心から信じられなくなることなのだ。

 

人を裏切る人は、自分のように相手も裏切るかも?と疑心暗鬼で生きるしかないのだ。

 

 

それが人を裏切ってきた人の罰であり、裏切りの代償なのだ。