親が共働きだったから、じーちゃんとばーちゃんはずっと僕の面倒を見てくれてた。
僕が一番近くにいる孫だからずっと大事にしてくれてた。
ばーちゃんは昔の女の人には珍しくタバコを吸ってた。
一本をそのまま吸うのは勿体ないからと、一本のタバコを小さく切ってパイプで吸ってた。
じーちゃんは右足に障害のある障害者で普通に歩くことが出来なかった。だから、戦争に呼ばれないことを恥じていたようだ。
不思議だ。
怖くて命が危なくなる戦争に行くことが誇らしい時代があり、戦場に行けないことを恥と感じる時代があったのだ。
ばーちゃんは、あまりじーちゃんのことが好きではなかったみたいで、しょっちゅう喧嘩をしていた。
聞くと仕方なく見合いで結婚をしたと言っていた。
でも、女4人、男2人の子供を作ってた。
昼間は仲が悪いのに、なぜだか夜だけ仲が良かったみたいだ。
不思議だ。
ばーちゃんは僕のためにいつもポテトチップスを買ってくれた。
でも僕がすぐに食べてしまうから、すぐに無くならないように戸棚の一番上にポテトチップスを隠してくれてた。
僕はそれを見つけて、いつもすぐに食べてしまってた。
でも、ばーちゃんはいつも同じ場所に隠すんだ。
まるで、早く僕に食べさせたくてしょうがないみたいに…
僕は「笑っていいとも!」が放送されてる時に何気なくばーちゃんに嘘をついた。
「タモリさんはもう亡くなってて、これは録画だよ」
どうせすぐにバレる嘘だし、罪の意識など何もなく軽い気持ちで言った嘘だった。
しばらくして、じーちゃんが亡くなった。
でも、あんなに喧嘩して仲が悪かったのに、ばーちゃんはじーちゃんがいなくなって1年も経たずに体がかなり弱ってしまった。
でも…ばーちゃんは寝たきりとなって、言葉を発するのも苦労してた時期に僕に言ったんだ。
「タモリさん、今もテレビで見るけどなんでや?」
僕は言葉に詰まってしまった。
「まだ信じてたんだ…」
でも、可愛い孫が嘘ついてると知ったら、さらに体調を悪くさせてしまうかもと思ってこう言った。
「あれも録画だよ、最終回まで録画をしてるみたいだよ」
そう言うと納得した顔で僕を見つめたのを覚えている。
そして、ばーちゃんが亡くなった。
ばーちゃん、嘘ついてごめんね。
いつも焦げた焼き飯を作ってくれてありがとう。
いつも勝手にポテトチップス食べてごめんね。
じーちゃん、タケノコの掘り方を教えてくれてありがとう。
じーちゃん、大河ドラマ見たいのに僕がテレビを占領してゲームしちゃってごめんね。
竹トンボの作り方を教えてくれてありがとう。
じーちゃん、ばーちゃん、たくさんのごめんねとありがとうを言わせてくれて、本当に感謝してる。
ずっと、可愛がってくれて本当にありがとう。
また会いに行くね!
今度は嘘はつかないし、大河ドラマを見るのを邪魔もしない。
今度は「ありがとう」だけを言えるような孫で会いに行くからね!